海図の裏紙

我が身に降りかかってきたことをつらつら書きます。

伊豆諸島で転地療養した話⑤ 大島公園~三原山

前回までのあらすじはこちらから。

 

momomomoはいいぞ。早朝からやっているため、朝5時にフェリーから追い出されても問題なし。ちなみに御神火温泉もフェリー旅客に対応して朝早くから営業している。

 

この日から2日間は、大島バスの2日乗車券を活用して移動した。なお、バスは本数が限られているため、予め綿密にスケジューリングする必要がある。

アクティビティ・都立大島公園 椿園

椿の園芸種なんて、注意して見たこともなかった。写真はそれらのごく一部である。

一つひとつの樹の下には品種名と系統がプレートで表示されている。それらを見るだけでも結構面白い。

 

園内では大島桜も満開だった。

 

 

ちなみに、椿の学名は"Camellia japonica"、茶の学名が"Camellia sinensis"*1であることからもわかる通り、ツバキとチャノキは同じツバキ科ツバキ属の植物である。にもかかわらず、椿がこれだけ多種多様な品種に恵まれたことと、茶が在来種や実生から"やぶきた種"一辺倒にシフトしたことは、同じ嗜好品でありながら全く対極的であり、茶の工業的側面を伺い見ることができる気がする。

 

アクティビティ・都立大島公園 動物園

溶岩や自生林を活かした公営の動物園。入場無料なのに、私が訪ねたときは誰もお客さんがいなかった。もったいない…………

 

一番の見どころはレッサーパンダ(多分)。

気のせいか、ちょっと忙しなく動いていた。かわいかった。

 

他にも、

 

そしてこいつが、大島の貴重な自生種や農作物を食い荒らす「キョン」である。

夜に山に近づくと、こいつの遠吠えを聞くことができる。

 

アクティビティ・三原山トレッキング

大島公園から三原山へ向かう、一日1本しかないバスに乗った。
バスで下山するには、出帆港へ降りる1時間後のバスしかないため、乗客は私だけであった。いいのかこんなに接続悪くて。

圧倒的カルデラが、私を、君を待っている。

 

その前に腹ごしらえ。

リノベーションして間もない「御神火茶屋」にて。カルデラを目の前に、ソンを聴きながら食べるバターチキンカレーの、まあ美味いこと美味いこと。三原山での腹ごしらえには絶対におすすめしたい。

いよいよ山登り開始。

1986年11月に大規模噴火を起こし、全島避難となった伊豆大島三原山の登山道にはシェルターが設置されている。

そのときの溶岩流で分断された遊歩道。

 

火口からあふれた溶岩流の跡が、黒く膨らんで残っている。とてもわかりやすい。

 

左下から写真中央まで伸びており、突端部が先ほどの遊歩道の分断地点。
その奥に見える、一番大きな鉄塔が「伊豆大島デジタルテレビ中継局」で、伊豆大島の西半分と利島をカバーしている。

余談だが、実は伊豆大島にはもうふたつテレビ中継局がある。ひとつは「波浮テレビ中継局」で、島の南部にあたる差木地から波浮港をカバーする。
もうひとつが「伊豆東海岸デジタルテレビ中継局」で、これは相模灘を挟んで対岸にあたる伊豆半島の、伊東市川奈~下田市須崎あたりを広範囲にカバーする。御神火スカイラインの中腹にあるため、ここからは見えない場所にある。

送信所の管轄は関東総通局なのに、放送区域は東海総通局の管轄……という、ちょっとややこしい例。ここでも、伊豆半島と伊豆諸島の関係を垣間見ることができる。

 

山頂にたどり着くと、お鉢回りのコース唯一の建物を目にすることができる。お手洗いと、その上には展望台がついている。

 

噴火の記憶も新しいことから、山のあちこちに水準点や観測装置が見られる。

 

表砂漠。

 

神津島の天上山とは逆側から見る形になる。
右手前が利島、左奥が鵜渡根島と新島、さらにその奥にぼんやりと見えるのが神津島と思われる。神津島の手前に式根島が見えているらしいのだが、私にはギリ見えない。

 

中央火口。その迫力は、写真で伝えることはほぼ不可能とされる。

 

今でも水蒸気が火口の所々からあがっている。

地面もほんのり温かかった、気がする。

お鉢の縁をてくてくと登ってゆく。

これは1986年の割れ目噴火でできたB2火口。B火口列をなす火口のひとつ。
このほかにもC火口列ができ、こちらから流れ出た溶岩流は元町集落ギリギリに迫った。

マジでそこだけ地面がストンと落ちている。
写真だけ見ると、一瞬なにかのバグにも見える。

お鉢から下り始めている。対岸が遠い(房総半島)ので、水平線が薄く、船が浮いているように見える。

 

何かに毒されており、富山県にしか見えない*2

 

なにかに見える気もするし、そんなことはない気もする。
ロールシャッハテストみたい。

 

裏砂漠。ちょっとこれを登りきる勇気はなかった。なにせ轍のようなものがない。

これだけ見ると、まるでアフリカにでも飛んだような気持ちになる。

 

ちなみに伊豆大島の上空は、西日本から羽田空港へ着陸する飛行機の定石ルートとなっているため、神津島では一切の音がなかったのに対して、こちらはかなりうるさい*3

 

三原山温泉に到着。ここまで8km強を2時間半弱で歩き通した。歩数は11000歩。
相変わらず汗だくなので、汗を流して湯浴みのお時間。

 

帰りの御神火スカイラインからの夕焼けと、元町集落の夜景。

 

御神火スカイラインを下りきる手前に、大島町メモリアル公園が整備されている。
2013年の台風26号による豪雨被害により、元々集落があった場所に土石流が流れ込んだ*4。その場所につくられたのが、この公園である。
そこに営みがあったようにはとても思えない空気だった。ストリートビューアーカイブを片手に、明るい時間に再訪したい。

 

本編⑥へつづく。

*1:"sinensis"とはつまり"Sinae"+"-ensis"、Sinaeは支那=中国のこと。

*2:ちなみに私のノートPCは、未だに"こころのないめん"と打つと「心の内免」と変換したりする。

*3:Flightrader24のPlaybackから、48倍速くらいで眺めてみるとよくわかる。その割に、羽田を離陸した飛行機が地元上空を通る音はあまり聞かないような…………。

*4:ちなみに先述の伊豆東海岸デジタルテレビ中継局も被害を受けた。