海図の裏紙

我が身に降りかかってきたことをつらつら書きます。

ファクハク余韻②伊豆川飼料(株) ならびに #マグ活

前回の記事はこちら。

 

……おかしい。ミラーレスを持って行ったはずなのに、あんまり写真が残っていない。だいぶ話に聞き入っていたのでしょう。

 

そのツナ缶にはワケがある

最近、このツナ缶をよく見かけませんか?特に静岡在住の方。

 

淡い水色の「とろつな」は、キハダマグロの「トロ」の部位を使った、ブロック状のツナ缶。
対してクリーム色の「しろつな」は、ビンチョウマグロ(ビンナガマグロ)を使った、フレーク状のツナ缶。一般的にツナ缶といえば「しろつな」の姿が近いですね。

 

違いをわかりたいあなたはこちらもどうぞ。


仕掛人の名前は伊豆川飼料さん。飼料と肥料の製造を手掛けています。
え?食品産業ではないのに缶詰製造とは。いかに…………?

 

どうしてここで飼料・肥料を?

その原料がこちら。

これ、なんだかわかりますか?

正解は魚粉です。中に混ざっている白い物体は砕かれたの部分。

 

 

これがその魚粉の原料となる魚の残渣。パッと見は、骨とどんぐりと落ち葉……
要は大型魚の不可食部分の寄せ集めなわけですが、カラッカラに乾いているので、もとの魚の姿はイメージしづらいような…………?

 

ここまで書けば、見出しの意味がわかるかもしれません。
清水港焼津漁港で水揚げが盛んな、冷凍のマグロやカツオの残渣を使って、魚肥をつくっているのが、伊豆川飼料さんの事業の主軸です。

とはいえ、今はマグロやカツオにとどまらず、有機の飼料や肥料も取り扱っています。

袋の中に、原料となる大型魚の残渣たちが入っています

残渣にまぎれた異物たち。その多くは釣り針です。ここで丁寧に除去されます

 

客先ごとに「ちょうどいい」肥料を

製品の特性上、肥料のほうが小ロットになりがちです。
で、その小ロットの肥料は、使用する農家さんなどのオーダーに合わせて配合していくのですが…………なにをどれくらい混ぜているかはガチの極秘。伊豆川飼料さんの生命線でもあるので、写真はカットです。

肥料の袋を綴じるミシン(?)。小ロットなので、この規模の機械が活躍します

代表的な肥料の配合比率の指標が「チッソ・リン酸・カリ」。それぞれ役割があります。

  • チッソ:窒素(N)。クロロフィルの構造に含まれるため、光合成の能力に直結するほか、タンパク質のペプチド結合部分(アミノ酸のアミノ基部分)を構成したり、DNA・RNAの塩基部分に含まれたりと、与えたチッソはそのまま植物の根や茎・葉に取り込まれていく。連作障害の正体は、土壌のチッソ不足であることが多い。
  • リン酸:リン(R)を含む、有機化学上で単位物質ともいえる有機物。ヌクレオチドを構成する上で欠かせない。ヌクレオチドにはDNA・RNAだけでなく、エネルギー伝達物質であるATP・ADPも含まれる。実肥とも呼ばれ、結実を促進する作用もある。
  • カリ:カリウム(K)。植物の部位を構成するのではなく、いわゆる「補酵素」のはたらき。人間も「栄養摂りなさい」と言われるが、植物も同じ。

 

土壌や作物によって補うべき内容が変わるので、オーダーごとにここで配合していくのです。

 

そして #マグ活 へ……

全体を俯瞰すると、「静岡で水揚げされたマグロやカツオのうち、可食部は様々な人の手を通りながら食卓へ、不可食部は飼料や肥料へ形を変えることで、農地や牧場を豊かにしながら、食肉・鶏卵・牛乳や、みかん・お茶・野菜などに姿を変えて食卓へやってくる」という、つながりの中継地になっています。最近の言葉を使えばアップサイクルというもの。

 

が、しかし。国内における水産加工業、とりわけ静岡県内での缶詰製造が、今めちゃめちゃ窮地にあります。
魚価の高騰や生産コストの急騰により、生産加工拠点は海外への流出が止まらず、大型魚の残渣が国内で発生しない。これが、国内での飼料・肥料生産にも響いているのです。

 

伊豆川飼料さんに限らず、国内(ほとんどが静岡県内ですが)の缶詰製造業者の足場が崩れつつあるだけでなく、水産加工業もその影響を受けているはずです。

 

ではどうすればよいか。仕組みを維持することは、ひとりの力では限界があります。
でも、「国内でのマグロやカツオの水揚げ・加工を、"食べて応援"する」ことは、ひとりからでも始められます。

 

こうして、Twitter上の #マグ活 は始まったのです。

おかわりいただけただろうか…………。とろつな・しろつなは、「ツナ」がりを生み出すひとつの手がかりなのだ…………。

 

みなととはたけをひとツナぎ。清見潟のほとりからは以上です。

 

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